第51回全日本社会人選手権大会
(2008.08.29-9.03 )

・種目名クリックで対戦結果が表示されます。
種 目優  勝準 優 勝三  位参加数
男子単 佐々木 翔
 (秋田)
井上 知也
 (東京)
竹村純
 (北海道)
佐伯 浩一
 (東京)
350
男子複 小宮山 元
廣部 好輝
 (東京)
米 隆夫
橋本 博且
 (富山)
會澤 真之介
仲澤 悟史
 (東京)
川口 馨士
川前 直樹
 (東京)
234
女子単 野尻野 匡世
 (東京)
平山 愛
 (宮城)
今別府 香里
 (大阪)
三好 奈緒
 (秋田)
144
女子複 松田 友美
赤尾 亜希
 (千葉)
松尾 静香
 (大阪)
今別府 靖代
 (東京)
日野 由希江
小池 温子
 (広島)
岩脇 史
広岡 まり香
 (東京)
124
混合複 平田 典靖
 (富山)
松尾 静香
 (大阪)
川前 直樹
田井 美幸
 (東京)
廣部 好輝
金森 裕子
 (東京)
大滝 祐紀
 (愛知)
服部 麻衣
 (宮城)
101

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観戦記9/2①
観戦記9/2②
観戦記9/3①
観戦記9/3②




『第4日目(9/2) 観戦記①』


 盆地特有の残暑が厳しい福島県会津若松市。
 この地で8月29日(金)より、第51回全日本社会人選手権大会が開催
されています。
 土、日、月と市内、最大3か所の会場で熱戦が繰り広げられ、9月2日
(火)より、鶴ヶ城体育館一か所開催となり、各種目ベスト4まで絞り込
まれました。

 この大会へのエントリーは北京オリンピック前で締め切られていました。
そのため、大会前は何人かのオリンピック代表選手も出場選手に名前を連ね
ていたのです。
 しかし、そうした選手らの殆どが出場をキャンセルするという結果となり
ました。多くはコンディショニングの問題が、キャンセルの理由です。
 既にシード&ドローも発表されていたため、大会運営において少なからぬ
影響を及ぼしたと懸念されます。
 これはあくまで個人的な感想ですが、ナショナルメンバーの選手らには、
社会的責任というものが追随しており、これが全国社会人選手権大会という
重要な大会での(大会の規模の大小に関わらず)直前の出場キャンセルという
のは、エントリーの締め切り時期、オリンピック直後の開催という点を考慮し
ても、所属チーム、選手らの判断に甘さがあったとしか思えないのです。

 とはいえ、大会は順調に進行しています。
 観戦しながらまず感じたのは、この大会がロンドン・オリンピックに向けた
戦いのスタートということです。
 11月の全日本総合選手権大会への出場権がかかり、それがひいては、ナショ
ナルメンバー選考にもつながって行く。そう考えれば、この大会の重要性はお
のずと見えてくるはずです。
 月曜日、男女シングルスではベスト16が確定しました。それは総合への予選
出場権確定をも意味します。勝利の瞬間、思わず涙した選手、両足のけいれん
に耐えながら勝利をつかみ取った選手など、勝負にかける熱い思いが伝わって
きました。

 さて、月曜日の最大のアップセットは女子シングルスで起こりました。
 第3シード、樽野恵選手(東京)の敗退です。
 2回戦から出場の樽野選手。初戦の恵良友里亜(秋田)で大苦戦。
2(21−19、19−21、21−19)1 という薄氷を踏む内容で辛くも勝利。3回戦
では第1ゲームを12本で奪いながら、第2ゲームに入ると、犬飼菜月選手(茨城)
の攻勢をまともに受け、15本、10本での逆転負けを喫してしまいました。
 試合後、観客席には放心状態の樽野選手の姿がありました。

 それ以外では、各種目で注目選手、ペアが順当に勝ち上がっています。

 本日、火曜日、試合はさらにヒートアップします。

            (取材・文/ライター 佐藤純郎)


『第4日目(9/2) 観戦記②』


 9月2日(火)は、各種目でベスト4が出揃いました。
 激戦が続く中で、まず目を引いたのは、女子シングルスで相次いだ波乱です。

 7月の全日本実業団で見事な活躍を見せた藤井瑞希選手(熊本)が、4回戦で
打田しづか選手(日本ユニシス)に敗れています。
 また、同じく4回戦で、ナショナルメンバーで、先のランキングサーキットの
覇者、後藤愛選手(東京)が、平山愛選手(宮城)に苦杯をなめています。
 藤井選手はダブルスにも出場しています。その試合中に、足首に故障を発生さ
せたようで、本来のスピード感豊かな動きが見られませんでした。さらには、
エアコン設備のない体育館で、スタミナを消耗したのかもしれません。
 また後藤選手ですが、相手の平山選手が絶好調でした。立ち上がりから果敢な
攻撃が功を奏し、リズムに乗ると、第1ゲームを先取します。
第2ゲームこそ、後藤選手が意地で取り返しますが、ファイナルでは、再び平山
選手のショットが冴えを見せます。序盤は全くの平山選手のペースでした。
しかしここで後藤選手に意地を見せ、終盤に向けて、一進一退の攻防に。
 19−18でマッチポイントを狙いにいった後藤選手のショットが惜しくもネット。
19オールで並ばれてしまいます。逆にマッチポイントを握られた後藤選手。最後
はウォッチしたショットがエンドラインぎりぎりに決まって、平山選手が接戦を
制しました。
 試合後の後藤選手。
「勝ちたいという気持ちがカラ回りした試合でした。立ち上がりから相手の
ペースで試合を進めてしまいました。第2ゲームを取って落ち着けるかなと思った
のですが……。」

 この後、順調に試合は消化され、各種目のベスト4が出揃いました。結果はトー
ナメント表をご覧下さい。
 女子ダブルス準々決勝で、藤井瑞希&垣岩令佳ペア(熊本)が日野由希江&小池
温子ペア(広島)に敗れています。藤井選手、足首の故障が尾を引いたのでしょう
か?
 第1シードの松田友美&赤尾亜希ペア(千葉)は順当にベスト4を決めています。

「まだ調子は完全に戻ったとは言えません。試合勘が今ひとつ。それでも(準々決勝
の相手)、森かおり&三木佑里子ペア(大阪)との試合では、もっと攻撃した方が
いいねって、作戦を切り替えることができたりしているので手応えは感じています」

 女子シングルス。ここでは三好奈緒選手(秋田)が初のベスト4入りを果たしまし
た。
若手の打田しづか選手(東京)との試合では、第1ゲームを落としながら、そこから
集中力を高め、2ゲームを連取、逆転勝ちを収めています。
 明日の準決勝の相手は平山愛選手(宮城)。こちらも初の4強入りを果たしました。
後藤愛選手に勝った試合は、快心の出来。
「自分から仕掛けることを心がけて戦いました。暑さもあって、なかなか大変ですが、
勝ち続けているので、ここは良い体育館なんだと思います」

 もうひとつの準決勝は、野尻野匡世選手(東京)と昨年の覇者、今別府香里選手が
対戦します。その野尻野選手。
「社会人になってから、なかなか良い結果を残せていなかったので、今回のベスト4
入りで、ほんのちょっと、恩返しができたかなと思っています。明日は、高校時代を
過ごした福島の方々に笑顔で戦う自分を見せられたいいなと思っています」

 男子シングルスは竹村純選手(北海道)がベスト4入り。
最終日の準決勝で、現在、日本ランキング1位の佐々木翔選手(秋田)と対戦します。
先のランキングサーキットの決勝で対戦。悔しい負けを喫しているだけに、期する思い
は熱いようです。
「あの時は試合開始直後からやられてしまったので、出だしに意識を集中させて戦い
たい。体もきつい部分がありますが、この暑さが、逆に僕に合っているんだと思って
戦います」

 男子ダブルスでは、北京オリンピック代表の坂本修一選手(東京)が同僚の数野健太
選手(東京)と組んで出場。惜しくもベスト8で敗退しました。
「オリンピック直後で体も精神的にも キツイ部分があったのですが、国内の大会は少な
いし、出たいという気持ちが強かったのです。いつもと違うパートナーと組むのも、
新しい発見があって、楽しいものです」
 坂本選手、笑顔で語ってくれました。

 辞退組も出た中で、順当に勝ち上がってきたのは、川口馨士&川前直樹ペア(東京)
です。
その川前選手。
「ランキングサーキットでの敗戦があって、全日本実業団でも、もうひとつしっくり
こない戦い方をしていたので、この大会はゼロからのスタートだと位置付けていまし
た。ここまでは、まあ順当かなと思います。ここまで来たら、もちろん、優勝したい
ですが、まずはひとつ、ひとつです」

 最後の種目、混合ダブルスはなかなか予想が難しいですね。
 それでも、やはりコミニュケーションがしっかりとれているペアが順当に勝ち上が
ってきているように思います。

 明日3日(水)が最終日。各種目の準決勝、決勝が行われます。
 栄冠を目指し、ハイレベルな試合が繰り広げられることを期待したいと思います。

            (取材・文/ライター 佐藤純郎)


『最終日(9/3) 観戦記①』


 9月3日(水)、大会最終日は各種目の準決勝と決勝が行われました。今週に
なってぶり返した暑さに加え、なかなかハードな日程の中で、様々なドラマが生
まれた最終日でした。

 午前10時、混合ダブルスから準決勝が始まりました。
 2試合とも経験値で上回るペアが勝ち、決勝へコマを進めました。平田典靖
(富山)&松尾静香(大阪)ペアのキャリアはほぼ1年。大会前の練習もままな
らず、
「この大会でも、初戦のコートで初めて会いました。最初に交わした言葉は、
お久しぶり、でしたね(笑)」
 と、平田選手。
 序盤、硬さも見られ、やや苦戦かなとも思われましたが、次第にコンビネー
ションの良さを見せ始め、廣部好輝&金森裕子ペア(東京)に、結果的には快勝
でした。
 一方の勝者は川前直樹&田井美幸ペア(東京)です。田井選手は昨年まで松本徹氏
(引退)と組んでいたわけですが、新たなパートナーに川前選手を迎え、新たなスタ
ートです。が、キャリア不足をお互いのダブルスでのキャリアで補い合い、勝ち上が
って来たのは、さすがというしかありません。
 こちらも粘る大滝祐紀(愛知)&服部麻衣(宮城)ペアを振り切り、決勝進出を決
めました。

 続いて男女シングルスが行われました。
 注目は男子シングルスの佐々木翔選手(秋田)と竹村純選手(北海道)のナショナ
ルメンバー同士の一戦です。前日、
「まずは絶対に立ち上がり。ランキングサーキットでは立ち上がりから一気に離され
て完敗だったので、そのことを意識したい」
 と語っていた竹村選手。その言葉どおり、序盤から息詰まる接戦となります。第1
ゲームの中盤以降、一歩リードしたのは竹村選手でしたが、18点で足踏み。そこから
佐々木選手の攻勢を許し、逆転で、このゲームを失いました。第2ゲームも一進一退
の攻防でしたが、またも中盤で抜け出すことに成功したのは竹村選手。今度は佐々木
選手の反撃を19点で食い止め、ファイナルゲームへ。
 しかし、ファイナルでは序盤から佐々木選手が一気にスピードアップ。竹村選手を
10本に抑え、決勝進出を決めました。
 試合後の竹村選手。
「立ち上がりはうまくいったと思います。でも第1ゲーム、詰め切れず取り切れなか
ったのが痛かった。勝つためには立ち上がりだけ気をつけてもダメですね、ゲーム全
体を支配しないと。でも、ランキングサーキットの時に比べれば、内容では良い試合
ができました。また練習して、力をつけたいと思います」
 もう一方は、井上知也選手(東京)が、
「一度も勝ったことがない」(井上選手談)という佐伯浩一選手(東京)に逆転勝ち
しました。

 女子シングルスの注目カードは、ディフェンディングチャンピオン・今別府香里選
手(大阪)に野尻野匡世選手(東京)が挑んだ試合です。
 今別府選手は月曜日、初戦の試合中に左ふくらはぎを痛めました。それ以降、テー
ピングを施しながらの戦いを続けていたのです。しかしここまでの試合を見る限り、
その影響は最小限のように見えました。
 試合は今別府選手が実力、経験で上回るだろうという予想とは裏腹に接戦となります。
今別府選手がゲームをリードしているように見えるのですが、ミスも多く、突き放すこ
とができません。
 それでも第1ゲームを競り勝ったのは今別府選手でした。
苦戦しながらも第1ゲームを奪ったことで、第2ゲームは一気にペースをつかむだろう
という予想は、ここでも外れてしまうことになります。様相は第1ゲームと同じ。
今別府選手がリードをしているのですが、ミスを重ね、乗り切れないシーンが連続し
ます。
客席から見ていると、野尻野選手はかなりスタミナを消耗しているように見え、今別府
選手がミスさえ犯さなければ、勝利をつかめるだろうと思えたのです。
が、中盤以降、流れは大きく野尻野選手に傾きます。今別府選手は連続失点を喫し、
16本でゲームを失いました。
 ファイナルです。
決定的な流れは分からないように見えましたが、
「第2ゲームの中盤で、勝てるかなと思いました」
と、野尻野選手。今別府選手を17本に抑え、勝利をものにします。
「勝った瞬間は嬉しくて涙が出るのかなと思ったのですが、それより疲れ切っていて、
それどころではありませんでした」
 一方、敗れた今別府選手にとっては、精神的ダメージが大きかったようです。
「相手が疲れて、足が止まっているのは分かっていました。足のケガの影響はほとんど
なかったのですが、それでも自分も疲れを感じていて、攻め切れませんでした。2連覇
は意識していませんでした。ただ大阪国際、ランキングサーキットと、なかなか結果が
出せていなかったので、この大会は勝ちたかった」

 もうひとつの女子シングルス準決勝は、平山愛選手(宮城)が三好奈緒選手(秋田)
を圧倒。決勝進出を決めました。

 男子ダブルス。
米隆夫&橋本博且ペア(富山)がナショナルメンバー、川口馨士&川前直樹ペア(東京)
を、試合の立ち上がりから終始圧倒。第1ゲームで19本に抑えて奪うと、第2ゲームでは
14本しか与えず、快勝です。
 ランキングサーキットで3位に甘んじた川口&川前ペア。大会前から優勝を狙っていま
したが、またも準決勝で足元をすくわれてしまいました。
 もう一戦。前日、佐藤翔治(東京)&佐々木翔(秋田)ペア、それに同僚の坂本修一&
数野健太ペア(東京)を破り、勢いに乗る小宮山元&廣部好輝ペア(東京)が會澤真之介
&仲澤悟史ペア(東京)を圧倒しました。

 女子ダブルス。
 準々決勝で藤井瑞希&垣岩令佳ペア(熊本)を破る殊勲の勝利を挙げた日野由希江&
小池温子ペア(広島)が、この大会で復活への兆しを見せている松田友美&赤尾亜紀ペア
(千葉)に挑みました。
 しかし“アカマツ”の壁は厚く、3位入賞に留まりました。
 もう1試合は、ランキングサーキットの優勝ペア、松尾静香(大阪)&今別府靖代
(東京)ペアと、岩脇史&広岡まり香ペア(東京)の対戦。ペアとしての経験で上回る
松尾&今別府ペアが勝利を収めました。

            (取材・文/ライター 佐藤純郎)


『最終日(9/3) 観戦記②』


 決勝戦が始まりました。
 まずは男子シングルスです。
 佐々木翔選手(秋田) 2(21−10、21−18)0 井上知也選手(東京)

 佐々木選手の安定した戦いぶりが際立った試合でした。北京オリンピック出場を逃した
悔しさが消えることはないと思いますが、その後の2大会できっちり結果を残している
ことに、彼の精神的な強さを感じます。
「この大会に向けては1か月ほどの準備期間がありましたので、しっかりトレーニングを
積むことができました。体重を増やし、パワーをつけたのです。成果はスマッシュのスピ
ードが上がったこと。でも、課題も見つかったので、そこを修正しようと思っています。
国際大会、全日本総合を見据えて。この大会では(佐藤翔治選手と組んで)久々にダブル
スにも出場したのですが、思った以上に下手くそでしたね(笑)。でも、観客の方々も楽
しんでくれていたし、僕もプレイしていて楽しかった。これからも続けるかどうかは、
未定なのですが」

 準優勝の井上選手です。
「準決勝で佐伯浩一選手(東京)に勝てたことが何よりうれしいです。これまで一度も
勝ったことがなかったので。勝因は中西洋介コーチのデータ分析に尽きます。佐伯選手の
戦い方などが分析されていて、ミーティングでデータを頭に入れて、その指示どおりに
プレイすると、そのとおりで、本当、中西コーチに御礼を言いたいです。この結果を自信
に変えて、さらに上を目指したいと思います」

 女子シングルス決勝。
 野尻野匡世選手(東京) 2(21−8、21−14)0 平山愛選手(宮城)

 野尻野選手の自信に満ち溢れたプレイが目を引きました。体は相当にキツそうでしたが、
若さと、準決勝で今別府選手を破った勢いに乗って勝ち取った栄冠でした。
「高校時代を過ごした福島県での大会で、当時から応援して下さった方々が観客席から見守
ってくれていると思って、プレッシャーを感じずにプレイできました。試合の連続はインタ
ーハイの経験で慣れてはいましたが、社会人の大会は1試合、1試合がとにかくキツくて、
体の疲れ方が全然違います。この優勝をきっかけにして、また頑張っていきたいです」
 本当に体がキツそうで、話すのもやっと、という感じでしたが、笑顔に充実感が滲んでい
ました。

 敗れた平山選手。悔いが残る試合だったようです。
「準決勝で三好(奈緒=秋田)さんに良い内容で勝って、そのイメージのまま決勝も戦って
しまいました。三好さんとの試合は、とにかく積極的に攻めようと思って臨んだことがうま
くいきました。決勝戦の相手、野尻野さんは疲れていたのは分かっていて、もっと球を回し
て、動かしていけば、結果はまた違ったかもしれません。ベンチからも、回せという声が
あったのですが、試合が始まってからは修正が効かなかった。私も疲れがあったので、そう
いう順応、切り替えができなかったのかなと思います。この後、もう少し時間が経ったら、
もっと悔しさが増してくるかもしれません」

 その悔しさをバネに、次のステップに向かって欲しいものです。

 混合ダブルス決勝。
  平田典靖(富山)&松尾静香(大阪)ペア
       2(21−19、21−15)0 川前直樹&田井美幸ペア(東京)

 平田&松尾ペアがようやくタイトルを獲得しました。松尾選手が前で球を作り、後衛に
構える平田選手が高い打点から強烈なスマッシュを打ち込む。中国の混合ダブルスのスタ
イルを思わせるペアで、昨年の総合では、ナショナルメンバーのペア、舛田圭太(富山)&
前田美順(熊本)ペアと、事実上の決勝戦と思えるような熱戦を演じていました。
 さらに、4月の大阪国際、7月のオーストラリア国際では、いずれも準優勝を果たして
いたのです。
 感じるのは、このペアの修正能力の高さです。試合の序盤にリードを許すことはあって
も、試合の流れの中で徐々にペースをつかみ、気づいたときには試合をひっくり返してい
るのです。
 決勝戦も、正にそうした展開でした。
「いくつか試合をこなしてきたので、なんとなく組み慣れてきたのかなあと思いますね。
決勝はサービス回りが特に良かった。松尾選手はネット周辺の球をしっかり触ってくれる
ので、とてもやりやすいパートナーです。この優勝でひと安心。総合では去年のこともあ
るので、舛田&前田ペアといい所(決勝?)で戦って、勝ちたいですね」
 と、平田選手。オンコートでは本当に物静かな平田選手ですが、質問には予想外(?)
にハキハキと答えてくれました。

 男子ダブルス決勝です。
 小宮山元&廣部好輝ペア(東京)
2(18−21、21−14、21−13)1 米隆夫&橋本博且ペア(富山)

 キャリアで勝る小宮山&廣部ペアが、準決勝でナショナルメンバー、川口馨士&川前直樹
ペア(東京)を破った勢いに乗る、米&橋本ペアに逆転勝ちしました。
 その小宮山選手。
「一度は取ってみたかった日本一のタイトルを、ようやくつかむことができました。
インカレでも総合のミックスでも、決勝で負けていました。僕はディフェンスも下手だし、
廣部に球を作ってもらって、打つだけなのです。準決勝でも決勝でも、そんな僕のプレイ
スタイルを知っているから、なかなか球を上げてこない。苦しい試合でした。でも、上がっ
たら気合いを込めて打ちまくりました。初めての全国優勝、カップって重いんですね、いい
もんです」

 パートナーの廣部選手です。
「優勝は意識していたわけではないです。ベスト32以降は苦しい戦いが続きましたから。
大きかったのは佐藤翔治(東京)&佐々木翔(秋田)ペアに勝てたことです。久々のダブル
スで本調子ではなかったかもしれないけれど、あの二人は、なんといっても僕らの世代の
最強の選手たちですから、そんな二人に勝てたことで、僕らのペアがリズムに乗れたと思い
ます。決勝戦は向こうがドライブ戦を挑んできましたが、速い展開の中でクロス、ストレー
トと打ち分けて、崩すことを意識しました。僕らのチームは良いコーチがいるし、他にも
強いペアがいるので、彼らに追い付こうという意識でやっています。それがこういう結果に
つながったと思います」

 初めての戴冠に、心からの笑顔が浮かんでいました。

 大会の最後を飾ったのは女子ダブルスです。
  松田友美&赤尾亜紀ペア(千葉)
     2(22−20、21−13)0 松尾静香(大阪)&今別府靖代(東京)ペア

 北京オリンピックへの出場がならず、赤尾選手の体調不良のため、一時的にコンビを解消。
復帰を果たした全日本実業団では、コンディションが戻っておらず、末綱聡子&前田美順
ペア(NEC SKY)に悔しい敗戦。
春以降、松田&赤尾ペアは、厳しい試練と闘ってきたのです。そうして迎えた今大会。
試合を重ねるごとに調子を上げてきたように思います。
6月のランキングサーキットと7月のオーストラリア国際で優勝した松尾&今別府ペアは、
勢いに乗った状態で迎えた大会でした。優勝と“ナショナル越え”は、当然の目標だった
と思います。しかし、決勝戦では現実を突き付けられました。
優勝した松田&赤尾ペアの話です。
「女子ダブルスにナショナルメンバーで出場したのは私たちだけでしたので、優勝しないと
いけないというプレッシャーはありました。でも、そういうプレッシャーよりも、ナショナ
ル候補には負けない、負けてたまるかという気持ちが強かったです。
相手の手の内は分かっているつもりでしたが、強くなったなあ、対等にやらないとやられる
よと思いながら試合をしていました。
オリンピックはみんなを応援していましたが、悔しい気持ちもありました。昨年の大阪国際
以来の優勝ですが、国内1種大会では、本当に久しぶりの優勝です。この優勝で、自分たち
もまだまだやれるという自信、頑張ろうという気持ちが戻ってきました。
ジャパン・オープンや日本リーグ、総合で、またライバルたち(小椋久美子&潮田玲子ペア
=三洋電機、末綱&前田ペア)と戦えるのが楽しみです」

 7月、全日本実業団で流した悔し涙が、まるで遠い昔と思えるような、満面の素敵な笑顔
で話してくれました。やはり“アカマツ”ペアが元気だと、この国の女子ダブルスは一気に
活性化します。彼女たちも言っていましたが、この先のジャパン・オープン、日本リーグ、
総合でのハイレベルな試合が、今から本当に楽しみになってきました。

 一方、健闘した松尾&今別府ペアです。
 まずは、今別府選手。
「お互い練習を一緒にやっているので、弱点は分かっていました。第1ゲームは競っていま
したが、自分たちのペースでできていたと思います。でも詰めのところで1点が取れなくて、
ゲームを失いました。第2ゲームも五分五分の展開。ただ勝負どころで私が同じミスを繰り
返してしまって、リズムがとれなくなってしまいました」
 松尾選手はチームの移動のため、ひと言だけの感想です。
「勝てるチャンスはあったと思います。なので、余計に悔しい」
 ふたりとも、間違いなく優勝と“ナショナル越え”が目標でした。それを達成できず、心底、
悔しさが滲んでいました。でも、そうした悔しさこそが、明日への活力となると思います。
ナショナルメンバーの“3強ペア”に一日も早く追いつき、追い越して欲しいと思います。
 
 若手の台頭が顕著だった種目。経験で上回る選手らが、実力を見せつけた種目。それぞれ
見どころが多くありました。
 私が強い印象を受けたのは、日本リーグのセカンドグループチームに所属する選手らの活躍
です。それは特に女子に顕著に見られた傾向です。
 女子シングルス準決勝では、秋田・北都銀行の三好奈緒選手。宮城・七十七銀行の平山愛選手
が決勝進出を賭けて戦いました。
 女子ダブルスでは、広島・広島ガスの日野由希江&小池温子ペアが、熊本・NEC SKYの藤井瑞希
&垣岩令佳ペアを破っています。
 また、宮城・七十七銀行の長縄美佳子&高橋美紀ペア、秋田・北都銀行の金上路子&小森美希
ペアらが、8強入りを果たしています。
 七十七銀行所属で、女子シングルス準優勝の平山愛選手は、
「春に入社してきた新人たちは元気が良くて、チームを活性化してくれました。前からいる
私たちも負けられないなと思わせてくれます。今チームは本当に良いムードで、日本リーグも
楽しみなんです」
 と、話してくれました。
 男子のいわゆる3強(NTT東日本、トナミ運輸、日本ユニシス)。女子の4強(三洋電機、
NEC SKY、NTT東日本、ヨネックス)。これらに続くチームが出てくることが、何よりこの国
のバドミントン界を勢いづけてくれると思います。
 そんな楽しみが膨らんだ大会でした。

            (取材・文/ライター 佐藤純郎)