2008 ランキングサーキット大会
観戦記(5月31日準決勝)

2008年日本ランキングサーキット 大会3日目

『ナショナルメンバーであることの“プライド”と“プレッシャー”』

 大会3日目、男女単複4種目の準決勝、計8試合が行われました。
 男子は、シングルスでは、佐々木翔選手(北都銀行)、竹村純選手
(JR北海道)という、ナショナルメンバーが決勝戦に進出しています。
 ここはナショナルメンバーの貫録勝ち、でしょうか。明日の決勝は
ふたりのプライドがぶつかります。
 ダブルスでは、同僚対決を制した平田典靖&黒瀬尊敏ペア(トナミ運輸)、
ナショナルメンバーペアを下した数野健太(日本ユニシス)&早川賢一
(日本大学)ペアが、それぞれ決勝戦進出です。
 番狂わせとも言えますが、どこか元気のなかったナショナルのダブルスペア。
少々気がかりではありますが……。

さて、この日、私の最大の関心事は女子シングルスの2試合です。

① 平山優選手(日本ユニシス)vs 樽野恵(NTT東日本)
② 後藤愛選手(NTT東日本)vs 今別府香里選手(三洋電機)

 結果は記録の方を見ていただくことにして。
 どちらの試合も、ちょっと予想外というか、衝撃的な内容の試合となりました。
 平山選手、樽野選手に完敗でした。
「動きが硬かったですね。ナショナルのメンバーとして、他の日本人選手には
負けられないと、意識し過ぎました。相手のパワーに押されちゃいけないと
分かっていても、押されてしまいました」
 と、深いため息。遠征続きで、なかなか思うように練習時間を作れないことも
今の悩みとのこと。
 一方の樽野選手。4月の大阪IC(インターナショナルチャレンジ)での
優勝以降、好調を持続している印象です。
「動きは大阪の時ほど良くはないんです。ただ今日は、気温が低いから、試合前
の練習でシャトルが飛ばないから、思い切ってラケット振っても大丈夫とわかって
いました。相手のエースは仕方がないけれど、私はしっかり踏み込んで、自分の
持ち味であるパワーを生かせればと思っていたのですが、上手くいきました」
 と、お馴染みの笑顔で話してくれました。
 平山選手が印象的な言葉を語ってくれました。
「ナショナルメンバーとして、日本のシングルスを引っ張って行かなければと
いう強い思いがあります。なので、こういう国内の大会ではきっちり結果を
残したい。でも、外国人との試合がほとんどですから、日本人選手との試合と
なると、本当にプレッシャーがかかります」
 う〜ん、なかなか難しい問題です。現在、WBF(国際バドミントン連盟)
の世界ランキングでは日本人トップの平山選手。この後、6月のシンガポール、
インドネシア、ふたつのスーパーシリーズに挑みます。

 さて、準決勝のもう1試合はナショナルメンバー同士の対戦となりました。
 勝者は後藤選手でした。
「香里ちゃんには4連敗中でした。試合前は、今日も負けるのかなと弱気に
なりそうでした。でも、ナショナルメンバーに入って、合宿や海外遠征を経験
したことで、変わった部分がありました。それは今の私のプレイスタイルでは
外国人選手には通じないということに気づいたこと。加えて、プレイにスピード
が必要だ、ということでした」
 この日の試合は、そんな後藤選手の言葉を裏付ける、素晴らしい内容でした。
昨年度の全日本社会人、全日本総合の女王、今別府選手をスピードで上回りま
した。
「球のスピードは感じませんでしたが、今までの試合とは違って動きにスピードが
あったと思います。第1ゲームの途中、ペースを崩された時、自分がそれに耐えら
れなかったのが悔しいです。ユーバー杯、日韓競技会、そしてこの大会と、気持ち
の維持が難しい面もあったのですが、だからこそ、ちゃんと勝ちたい大会でした」
 と、敗れた今別府選手は語りました。
 準決勝に進出した4人。ナショナルメンバー3人と候補選手が1人。彼女たちの
“現在”が如実に表れた結果だったのではないでしょうか? それでも、この4人
全員が日本の女子バドミントン界の中枢に居るのは事実です。
 決勝戦は共に、NTT東日本の同僚同士の戦いとなります。
「本当にやり難いです。向かって来ますしね。先輩として負けられないし」
 と、後藤選手。
「私もやり難い。でも、先輩の方が嫌がっているかもしれませんね」
 どんな試合になりますか。でも、レベルの高い、熱い試合になることは間違い
なさそうです。

 ダブルスもまた、違った意味で興味深い試合でした。
 ① 末綱聡子&垣岩令佳ペア(NEC SKY)vs 田井美幸&大日方美弥子ペア
   (NTT東日本)
 ② 松尾静香(三洋電機)&今別府靖代(ヨネックス)vs 前田美順&藤井瑞希
   ペア(NEC SKY)

 NEC SKYは、ペアリングを組み替えての出場です。若い垣岩選手、藤井選手
の経験値を上げるためとのことでした。
末綱&垣岩ペアは順調な立ち上がりを見せました。末綱選手が組み立て、新人の
垣岩選手が思い切りの良いスマッシュを叩き込みます。第1ゲームを見る限り、
この勢いのまま、試合は終わるのではないかと思われました。
歯車は第2ゲーム中盤過ぎから微妙に噛み合わなくなりました。そこを田井&大日方
ペアは見逃さなかった。このペア、とにかく元気です。声がよく出ます。勢いに
乗せてはいけないペアを、乗せてしまいました。
ファイナルは、激しい気合いの応酬となりましたが、NTT東日本の男女所属選手の
大声援を受け、田井&大日方ペアが競り勝ちました。

もうひとつの準決勝は、ダブルスペアとしての一日の長が、そのまま結果に出たと
いう印象です。
松尾&今別府ペアは、見る度にプレイの精度が高まっているように思います。大阪と
東京という所属チームが違うペア。練習時間は限られています。それでもいくつかの
大会への出場を重ねることで、徐々に良い感じになってきました。
「今日は2−0で終わらせたくて、最後は必死でした。試合するごとに良い感じに
なっているという実感はあります」
 と、今別府選手。それに合わせて松尾選手。
「ナショナル候補以上としては唯一のペアなので、負けられないという気持ちが強い
です。明日は優勝を狙いますよ」
 気合いを前面に出して戦う田井&大日方ペア。淡々とゲームを進め、ガッツポーズ
すらなかなか見せない松尾&今別府ペア。
 動と静、両極端なペアの対戦です。そこもまた興味をそそります。

ランキングサーキットは、終盤を迎えて来ると、ハイレベルな戦いが見られます。
それは全日本総合の週末にも似ています。
 選手たちは、プライドとプレッシャーの狭間で闘っていました。それがコート上から
ビンビン、伝わってきたものです。

                (取材・文/佐藤純郎)