第51回全日本社会人選手権大会観戦記
(2009.9.7-9.11)


『第3日目(9/9) 観戦記』


 今日はポートアリーナに張り付き、男女シングルスの試合を観戦しました。

 シード選手が敗れる波乱も起き、一日で数試合をこなさなければならないための、
心身のコンディショニングの難しさも感じました。

 男女シングルス、ベスト16が決まりました。

 そんな中で注目した試合は、何試合かあります。

 男子シングルス:

 古財和輝選手(富山) 2(21−14、23−21)0 遠藤大由選手(東京)
 *試合で注目したのは、結果ではなく、遠藤選手にでした。
  彼は昨年のインカレで、右ヒザ前十字靭帯を断裂しました。
  学生時代からナショナルチーム入りし、将来を嘱望されていた選手です。
  大学を卒業後、日本ユニシスに入社し、懸命にリハビリに取り組んできました。
  この全日本社会人大会が再起の舞台となったのでした。
  2試合を勝ち抜き、いよいよライバルとの対決を迎えました。

  でも、これを勝ち抜くスタミナは残っていないように見えました。
  わずかに動きが遅れて、結果、ミスショットが連鎖するようになりました。

  動きにも微妙なぎこちなさがあります。

  それでも、試合を終えた遠藤選手の表情は晴れ晴れとしているように映ったのです。

 『(この大会に出場して)良い経験ができました。動きは前も後ろも、まだ全然ダメです。
 でも(全日本)総合までには、必ず戻します』

  遠藤選手の試合を初めて見たように思います。
  柔らかく巧みなラケット捌きは、他の日本人選手とは異質な非凡さを感じました。

  ややヒエラルキーが固定化しつつある日本男子シングルス界に、
 新風を巻き起こしてくれるだろう選手が戻ってきました。

  この大会、好調なのは園田啓悟選手(熊本)。
  動きがシャープで効率的になったため、試合が仮に長引いても、
 スタミナ負けをすることがなくなったように思います。
  園田選手の話:
 『ここまでは順当です。勝負は明日から。先ずは明日の初戦です』
  相手は山田和司選手(東京)。
  スピード感溢れる、好ゲームが期待できそうです。


  女子シングルス:

  後藤愛選手(東京) 2(21−10、21−18)0 木村早紀選手(兵庫)
 *第1シードの後藤選手が大会3日目の午後、ようやく登場しました。
  出だし、先行をゆるしました。しかし、けっして慌てることなくジリジリ挽回。
  中盤で木村選手を捕らえました。
  相手コートの隅々に球を打ち分け、追い詰めていく後藤選手のラリーには、
 “理詰め”という言葉を思い出すことが多い。
  第2ゲームの18本失はやや反省すべきかもしれませんが、
 まずは順当にベスト16入りを決めました。
 『どんな大会でも、初戦は難しいです。
  ランキングサーキットでの失敗
 (1回戦で栗原文音選手に完敗)を繰り返すわけにはいかなかったので、
  とても緊張しました。
  社会人大会はこれまで愛称が良くないので、1戦1戦、丁寧に戦っていきます』


  三木佑里子選手(大阪) 2(21−14、21−10)0 野尻野匡世選手(東京)
 *この試合もまた、注目した試合です。
  奇しくも同期の戦いとなりました。
  野尻野選手。昨年、この大会を社会人1年目で制し、その才能を開花させたのでした。
  しかしその後、海外遠征先で左足首アキレス腱を断裂、今日が再起戦となりました。
  残念ながら動きはまだまだでした。
 『また試合のコートに立てたことが嬉しい。
 昨年のこの大会で、自分がどういう動きができていたのか、よく覚えていないのですが、
 とにかくここからが新たなスタートです』


  会場のポートアリーナがメインとサブの2つの体育館を使っていたため、
 移動をしながらの観戦となって、散漫になってしまった部分もあります。
  それでもあらかじめカードを選択し、効率的になるように見ていました。

  昨年の会津若松市での大会から一年、
 大きな成長を感じさせてくれる選手らがいました。

  その筆頭はおそらく、栗原文音選手(東京)だろうと思います。
  昨年は彼女の弱さが表に出て、早々と大会から姿を消していました。
  春のランキングサーキットの1回戦で後藤愛選手に勝利し、
 そこからベスト4に進出したのです。
  その成果を認められ、ナショナルチームメンバーに昇格。
  そんな事実が、彼女に自信をもたらしたのでしょうか。

  この日、3試合を勝ち抜いた栗原選手のオンコートでの姿には自信が漲っていました。
  背筋をピンと伸ばし、いたずらに声をあげることもなく、派手なガッツポーズもありません。
  淡々とゲームを進め、勝ち切っていました。

  明日は同じチームの先輩、平山優選手との試合です。
  栗原選手の成長の度合いを推し量るには最高の相手でしょう。

  大会3日目が終わりドロー表に残ったのは、ほぼお馴染みの選手たちです。
  残り2日間、大会は一気にヒートアップします。

  明日は男女のダブルスからスタートです。
  丸々2日間空いたダブルス。
  このインターバルが、もしかしたらペアに微妙な影響をもたらし、
 思わぬ番狂わせを引き起こすかもしれません。

  明日に備え、今夜は早く休もうと思います。



            (取材・文/ライター 佐藤純郎)


『第4日目(9/10) 観戦記』


 男女シングルスと女子ダブルス、混合ダブルスはベスト16からベスト4へ。
 男子ダブルスはベスト32からベスト4へ。

 ハードなスケジュールですが、中身の濃い試合を数多く見ることができました。

 男子シングルス:
 佐々木翔選手(富山) 2(21−8、21−11)0 早坂幸平選手(北海道)

 竹村純選手(北海道) 2(21−17、21−12)0古財和輝選手(富山)

 佐伯浩一選手(東京) 2(21−10、21−18)0 堀川善生選手(東京)

 佐藤翔治選手(東京) 2(21−17、21−12)0 山田和司選手(東京)

 *日本の男子シングルスを支える4人が、しっかり勝ち残りました。
  さすがと言うしかありません。
  注目したのは、佐藤選手 vs 山田選手の一戦。
  久々のシングルスに挑む佐藤選手でしたが、
 ナショナルメンバーの山田選手を向こうに回し、磐石の試合運びで完勝しました。
  やはり佐藤選手の実力は、今でもしっかり健在でした。
  山田選手の話:
 『スピードよりも、上手さにやられました。佐藤選手と佐々木選手。
 この2人を越えていかないことには、いつまでも良くてベスト4止まり。
  近い将来、必ず勝たなければいけない相手です』

 男子ダブルス:
 数野健太&早川賢一ペア(東京)
            2(21−10、21−13)0 柴原啓紀(新潟)&藤田真生(東京)
 *コツコツ勝利を積み重ねた柴原&藤田ペア、ここで力尽きました。

 坂本修一&遠藤大由ペア(東京)
            2(23−21、21−18)0 川前直樹&佐藤翔治ペア(東京)
 *この大会が“デビュー戦”となった坂本&遠藤ペア。
  しかし、川前&佐藤ペアに競り勝ちました。
  坂本選手の話:
 『この大会では、川前&佐藤ペアとの試合に勝つことを目標に据えてきました。
 今日、その目標を達成できたことには満足感があります。
 まだ組み始めたばかりですが、ここからが新しいスタートです』
  池田信太郎選手とのペアを解消後、遠藤選手とのペアで再スタートを切った坂本選手。
  こちらも良きダブルスペアになりそうな可能性に溢れています。
  明日は、準決勝で同僚の早川&数野ペアと対戦します。


 関野有起&鈴木知道ペア(北海道)
            2(3−10×、×)0 平田典靖&橋本博且ペア(富山)
 *第1ゲーム序盤で、橋本選手をケイレンが襲いました。
  一度は復帰したのですが、次第に酷くなったようです。
  コート上に突っ伏したまま、動けなくなってしまったのです。
  残念な結果となってしまいました。


 小宮山元&廣部好輝ペア(東京)
           2(21−11、21−18)0 武山修三&園田啓悟ペア(熊本)
 *昨年の王者ペア、ベスト4入りです。
  小宮山選手の話:
  『試合数が多くなると、本当にケイレンが怖いものです。
   夕べもそのことを考えると、怖くて仕方がなかった。
   去年、この大会で優勝して、ナショナルチーム入りもしましたが、
  まだまだ僕ら、4番目のペアだと思っています。
   自分たちのポジションを変えたい、そこを目指しています』


 女子シングルス:

 後藤愛選手(東京) 2(21−9、21−13)0 柏原未久選手(埼玉)
 *日本ランキング1位の後藤選手。抜群の安定感で、ここまで勝ち進んできました。
  後藤選手の話:
  『社会人大会では結果を残せていないので、まずはここまで来れてホッとしています。
   明日は去年、この大会で敗れている平山愛選手。
  “リベンジ戦”です』

 平山愛選手(宮城) 2(19−21、21−17、21−18)1 関谷真由選手(大阪)
 *昨年、準優勝を果たした平山選手。
  若手の成長株、関谷選手の前に立ちはだかりました。
  この接戦に競り勝った事実は、大いに評価しなければなりません。

 平山優選手(東京) 2(21−15、21−19)0 脇田侑選手(岐阜)
 *久々、平山選手がトーナメントの上位に勝ち上がってきました。
  チーム関係者の話によれば、けっして万全な体調ではないそうですが、
 そんな中でもこうして結果を残しているのは、さすがです。

 村松瑞穂選手(大阪) 2(10−21、21−18、21−13)1 後藤舞選手(広島)
 *ここまでの3試合、すべてフルゲームの末に勝ち上がってきました。
  村松選手の話:
  『“スーパーシード”で、私は初戦なのに、
  対戦相手は試合会場とかにも慣れていました。
   難しい試合が多かったです。自分で難しくしてしまったのもあるのですが。
   明日の相手の平山優選手とは同期なのですが、ここまで一度も勝ったことがありません。
   社会人になって、少しは成長した自分をぶつけたいと思います』


 女子ダブルス:

 末綱聡子&前田美順ペア(熊本)
          2(23−21、21−12)0 今井杏莉&大森舞ペア(宮城)
 *序盤、硬さが見られた末綱&前田ペア。今井&大森ペアの攻勢を許します。
  しかしそんな状況を自ら打開できるのが、さすが末綱&前田ペアの強みです。
  末綱選手の話:
 『試合前、前田が疲れているのがわかったので、
 私がなんとかしなければ、という気持ちが強くて、それがカラ回りしました。
 国内のタイトルがないので、この大会ではもちろん優勝が目標です。
 いつも言っていることですが、明日も、先ずは一戦、一戦、戦います』


 多谷郁恵&脇坂郁ペア(大阪)
          2(21−12、18−21、22−20)1 日野由希江&小池温子ペア(広島)
 *最初にマッチポイントを握ったのは、日野&小池ペアでした。
   しかし多谷&脇坂ペアの反撃を許し、自らのミスもあり、
  詰めることができませんでした。
   日野&小池ペアの実力は、既に多くの人々が認めています。
   ここしばらく、何度となくトップペアを追い詰めているのですが、
  なかなか勝てていないのです。
  “グッドルーザー”の名を、一日も早く払拭して欲しいものです。
  一方の多谷&脇坂ペア。
  絶体絶命の状況から、見事に勝利を収めました。
  最後まであきらめない。チャレンジをする。2人の経験値の高さを見せてもらいました。


 三木佑里子&米元小春ペア(大阪)
           2(10−×、−×)0 藤井瑞希&垣岩令佳ペア(熊本)
 *第1ゲーム開始間もなく、藤井選手にアクシデント(ケイレン)が起こりました。
  試合続行は不可能。無念のリタイアです。
  その瞬間、垣岩選手は泣き崩れてしまいました。


 橋本由衣&樽野恵ペア(東京)
           2(19−21、21−10、21−16)1 栗原文音&打田しづかペア(東京)

 *難しい試合を橋本&樽野ペアが競り勝ちました。
  3試合すべてがフルゲームの戦い。
  そんな中でコンビネーションのレベルを上げてきたのかもしれません。


 混合ダブルス:

 平田典靖(富山)&前田美順(熊本)ペア
              2(21−16、21−11)0 廣部好輝&金森裕子ペア(東京)
 *平田&前田ペア、ハイレベルな試合での完勝でした。


 橋本博且(富山)&藤井瑞希(熊本)ペア
        2(21−18、19−21、21−19)1 黒瀬尊敏(富山)&森かおり(大阪)ペア
 *凄い大接戦となりました。
  最後の最後、森選手のプッシュがネットにかかり、激闘に終止符が打たれました。
  この試合の後です。橋本選手と藤井選手がケイレンで試合をリタイアしたのは。


 小宮山元&浅原さゆりペア(東京)
         2(15−21、21−17、21−14)1 川口馨士&田井美幸ペア(東京)
 *ペアの経験の長い小宮山&浅原ペアが接戦を制しました。
  小宮山選手もゲームの流れをみながら、上手く体力の消耗を避けることができたようです。


 池田信太郎(東京)&潮田玲子(大阪)ペア
        2(15−21、21−12、21−12)1 多田亮太&工藤亜紀ペア(北海道)
 *注目の1戦は、池田&潮田ペアが第1ゲームを落とすという衝撃的な形で始まりました。
  多田&工藤ペア、第1ゲームは完璧でした。
  しかし1回戦からの勝ち上がりの多田&工藤ペア。
  この試合が2日間で6試合めでした。
  第2ゲームの中盤、ついに多田選手の足腰が限界を超えました。
  一気に動きに精彩を欠いてしまいます。
  同時に、ペアとしての経験は少ないものの、それぞれが経験豊かな池田&潮田ペア。
  落ち着いてワンゲームダウンの状況から抜け出す術を見出しました。

  多田選手の話:
 『予想以上に潮田選手が力強いショットを打ってきました。
 それへの対応が難しかったことと、僕の足が止まってしまいました』

  池田選手の話:
 『たくさんの応援を感じています。
 まだまだ課題は多いのですが、明日、優勝を目指して戦いたいと思います』

  潮田選手の話:
 『国内の大会で勝てなければ、世界など見えてはきません。
 もちろん優勝を目指して、明日は戦います』


 各種目ベスト4がそろい、最終日を迎えます。
 試合中のアクシデントによって、2組のダブルスが棄権敗退を余儀なくされました。
 過密な日程の影響もあるとは思います。
 以前の私ならば、その事実に対し、かなりの疑問符を投げかけたと思います。
 でも、ちょっと違う考え方もあるのです。
 それは、
 『このハードスケジュールを乗り切ることで、
 同時にハイレベルな選手たちが育成されているのではないか?』
 というものです。
 理想的な運営は確かにあるでしょう。
 でも、そればかりが重要なのではない、ということを、一方で痛感しています。

 もう一日、体力の限界に挑むような戦いが待っています。
 同時にそのことが、見る者たちに熱い何かを伝えてくれることでしょう。



            (取材・文/ライター 佐藤純郎)


『第5日目・最終日(9/11) 観戦記』


 最終日、準決勝と決勝が行われました。

 混合ダブルス:
 準決勝①
 池田信太郎(東京)&潮田玲子(大阪)ペア
       2(21−17、21−13)0 小宮山元&浅原さゆりペア(東京)
 *前日から、さらに進化したかに見えた池田&潮田ペア。
混合のペアとしては経験で上回る小宮山&浅原ペアに対し、
競ったのは第1ゲームの中盤まで。それ以降は終始“イケシオ”ペースでした。

 *もう1つの準決勝は、橋本博且(富山)&藤井瑞希(熊本)ペアが棄権のため、
  平田典靖(富山)&前田美順ペアが決勝進出となりました。


 男子シングルス:
 準決勝①
 竹村純選手(北海道)
    2(19−21、21−13、21−8)1 佐々木翔選手(富山)
 *佐々木選手、まさかの準決勝敗退でした。
  第1ゲームを接戦ながら奪った時には、このまま押し切るだろうと思えたのですが。
  第2、ファイナルと、この日はいつものようなタフさが見られませんでした。
  竹村選手、持ち前の粘りを存分に発揮し、佐々木選手を下しました。


 準決勝②
 佐藤翔治選手(東京)
    2(21−14、21−14)0 佐伯浩一選手(東京)
 *同じ所属チーム同士の対戦。佐藤選手が圧倒しました。
  強い、ただ、そのひと言です。


 女子シングルス:
 準決勝①
 後藤愛選手(東京)
    2(21−13、24−22)0 平山愛選手(宮城)
 *第2ゲーム、平山選手が食い下がりましたが、
 ゲームを奪うまでには至りませんでした。
 この大会の後藤選手は本当に安定感が抜群です。この強さの秘密はどこにあるのか?


 準決勝②
 平山優選手(東京)
    2(12−21、21−15、21−10)1 村松瑞穂選手(大阪)
 *“同期対決”。第1ゲームの村松選手は、何かが起こる予感もあったのですが……。
 第2ゲーム以降、平山選手がペースアップし、同時に村松選手にミスショットが増え、
 平山選手の、この大会における充実度の高さが際立つ試合となりました。


 男子ダブルス:
 準決勝①
 小宮山元&廣部好輝ペア(東京)
    2(21−9、21−11)0 関野有起&鈴木知道ペア(北海道)
 *小宮山&廣部ペアが強さを見せつけ、一方的な内容となりました。


 準決勝②
 数野健太&早川賢一ペア(東京)
   2(21−16、17−21、21−18)1 坂本修一&遠藤大由ペア(東京)
 *新ペアで挑んだ坂本&遠藤ペア。元ナショナルメンバーの遠藤選手にとっても、
 ケガからの復帰戦でした。
 *坂本選手の話:
 『新鮮な気持ちを感じることができた大会でした。3位という成績は、スタートしては、
 満足できる結果です』
  遠藤選手の話:
 『最後はちょっと体力面でもきつかった。負けたことは残念ですが、ここまで戦えた
 ことには十分満足しています』
 この後、坂本&遠藤ペアは、ヨネックス・オープン・ジャパンに出場します。


 女子ダブルス:
 準決勝①
 末綱聡子&前田美順ペア(熊本)
      2(21−12、25−23)0 多谷郁恵&脇坂郁ペア(大阪)
 *復調の兆しはあるものの、多谷&脇坂ペア、完全復活には至らず、でした。
 2007年の日本リーグ。あの時の滾るような闘争心は、まだ戻ってきてはいません。
 末綱&前田ペアは、要所を締め、きっちり決勝戦へと駒を進めました。


 準決勝②
 橋本由衣&樽野恵ペア(東京)
  2(15−21、21−15、21−14)1 三木佑里子&米本小春ペア(大阪)
 *ナショナル候補メンバーである三木&米本ペアが、こちらも若い橋本&樽野ペアに
 屈しました。橋本選手と米本選手は、3月まで青森山田高でダブルスを組んでいました。
 『コートの向こうに小春がいて、なんか変な感じでした。
 でも、だからこそ負けたくなかったんです』と橋本選手。
『全然ダメです。もっと練習します』と米本選手。ダブルスの前衛タイプとして、高校時代
から将来を嘱望されていました。今は、そこにプレイの幅を広げるべく、苦闘する日々を送って
います。
 『肝心な時に引いてしまいました』と三木選手。
 唇を噛み締めながら、帰路につきました。


 5種目の準決勝が終わると、会場内には、弛緩した空気が漂いました。
 でも、それも僅かな時間でした。
 午後1時30分。混合ダブルスから決勝戦が始まりました。
 前田選手に与えられたインタバルの時間は約30分間でした。
 試合はワンコートで行われたため、観客の視線が1試合に集中したのです。


 混合ダブルス:決勝戦
 池田信太郎(東京)&潮田玲子(大阪)ペア
        2(23−21、15−21、23−21)1 
                  平田典靖(富山)&前田美順(熊本ペア)
 *試合時間1時間25分。
ラリーポイント制としては、マックスに近い試合時間の長さ。
それを感じさせないハイレベルな戦いでした。
国内でこんなレベルの高い混合ダブルスが見られたことに対し、或る感慨さえ抱いたものです。
昨年の全日本総合では、混合の決勝が行われていた時、記者席はガラガラでしたが、
この日はズラリ、各社の記者たちが並んでいました。

混合のペアとしては、平田&前田ペアの完成度の方が明らかに高い。
それでも池田&潮田ペアが勝てたのは、
何より、2人がここまで積み重ねてきたバドミントンプレイヤーとしての経験が、
平田&前田ペアを上回ったということではないでしょうか?
ひとつのカギは、第1ゲームです。
一時は2−8とリードを許した池田&潮田ペア。
平田&前田ペアの強さばかりが目立った序盤戦でした。
しかし、池田&潮田ペアは、ここから粘り強く反撃を開始したのです。
最後は23−21でゲームを奪いました。
『第1ゲームを取れなかったことが最後、尾を引いたと思います』
と、試合後に平田選手は悔いていました。
序盤の勢いのまま、一気に突っ走れれば、結果は変わっていたことでしょう。

潮田選手の話:
『平田&前田ペアは、本当に強かったです。私たちはまだまだ全然弱い』
後片付けが始まった会場で、僅かな時間、立ち話をした時、こんな風に語ってくれました。
池田選手の話:
『男子ダブルスに比べると、混合では男子が全然キツイかもしれません。
色んな要素が全然異なるのです。サービスは、サービズラインからずっと下がって打つので、
本当にゼロからやり直しなんです』
そんな状況下でも、混合としては経験値の高い平田&前田ペアに、なぜ勝てたのか?
『ここです』コブシで胸を軽く叩きながら、池田選手は誇らしげでした。


想定外に長くなった混合決勝。
待たされたシングルスの決勝が、混合の決着を待たずに始まりました。


 男子シングルス:決勝戦
 佐藤翔治選手(東京) 2(21−10、21−19)0 竹村純選手(北海道)
 *佐藤選手、ここでも強さを見せつけました。
 佐々木選手を破り、勢いに乗る竹村選手を相手に、点差以上の完勝でした。
 佐藤選手の話:
 『優勝はしたのですが、気持ちはちょっと複雑ですね。
 今回エントリーしたのも、日本リーグでシングルスに出る可能性もあるし、
 ダブルスの練習ばかりでは身体の使い方も偏ってしまう。
 それを矯正する意味合いもあったのです。
 でも、ダブルスの経験がシングルスで間違いなく生きました。
 プレイの幅が広がったと思います』
 まだまだ全然シングルスプレイヤーとして健在です。
 しかし気持ちはダブルスにシフトしたと語る佐藤選手でした。


 女子シングルス:決勝戦
 後藤愛選手(東京) 2(21−15、21−15)0 平山優選手(東京)
 *社会人になって初のタイトル奪取に挑んだ平山選手。
 しかし後藤選手の充実度を増したプレイの前に屈しました。
 後藤選手の話:
 『ランキングサーキットでは1回戦負けという情けない結果でしたので、
 このタイトルは絶対に欲しかった。狙って優勝できたので、嬉しさも大きいです。
 平山選手に対しては、彼女が打つ決めのショットを、
 しっかり拾ってラリー持ち込もうというプランを立てていました。
 それと平山選手の迫力に圧されないことです。
 私はナショナルチームの一員ですので、
 負けられないというプライドを持って戦いました』
 身長152cm。しかし最近では、それを全く感じさせない、
 プレイそのものが大きくなっているように感じます。
 きちんと球の下に入って、基本に忠実なフォームで放たれているショットは、
 とても正確で、コートいっぱいに散らされるのです。
 “粘り強さ”というより、日頃の練習量の豊富さをうかがわせるフィジカルの強さと
 スピードで、相手を圧倒するようになりました。
 注目度はけっして高くないのが残念ですが、彼女の基本に忠実なプレイは、
 アマチュアプレイヤーたちにとっても、参考になることが多いのではないでしょうか?


 男子ダブルス:決勝戦
 数野健太&早川賢一ペア(東京)
    2(25−23、21−17)0 小宮山元&廣部好輝ペア(東京)
 *男子ダブルスはチームメイト同士の対決となりました。
 ダブルスにおけるチームの充実度の高さを象徴しています。
 試合は世界ランキングでは上位に位置する数野&早川ペアが、そのランキングのまま、
 小宮山&廣部ペアを破りました。
 昨年度の全日本総合王者ペア・坂本修一&池田信太郎ペアの解消によって、
 数野&早川ペアが実質上、日本のエースペアとなったわけです。
 平田典靖&橋本博且ペア(大阪)の急追もあって、ライバル争いはいっそう激化しそう。
 それが日本男子ダブルス勢のレベルを上げるはずです。
 早川選手の話:
 『第1ゲームを取れたことが大きかった。終盤、競った状況の中で、
 ショートサービスなのですが、やや長めのサービスを打っていました。
 マッチポイントでは、今度は、わずかに短めに打ったのです。
 小宮山先輩は必ず押し込んでくるからと確信して打ちました。
 狙いどおり、先輩がプッシュしたショットがネットにかかり、第1ゲームを取れた。
 それでグッと気持ちは楽になって、
 第2ゲームは良いリズム、良い流れで進めることができました』


 そして、大会の最後を飾ったのは、
 女子ダブルス:決勝戦
 末綱聡子&前田美順ペア(熊本)
      2(21−11、21−13)0 橋本由衣&樽野恵ペア(東京)
 *第一人者としてのプライドと自信で、若きペアを圧倒してしまいました。
 まったく危なげない、堂々たる試合でした。
 末綱選手の話:
 『(勝った瞬間は)嬉しさよりも、ホッとした思いの方が大きかったですね。 実業団の
決勝戦で悔しい負け(三洋電機の松尾静香&内藤真実ペアに敗れた)があったので、
 あの後で反省したことを活かし、このタイトルを取りたいという思いがありました』
 前田選手の話:
 『(勝った瞬間は)ああ、この大会では、もう試合をしなくてすむということでした。
 今は全てのペアが私たちに対して100%の力で挑んできて、それを感じながら試合を
していました。それでも、それに怯まず、しっかり受け止めてはね返せたと思います』


 52回目を迎えた全日本社会人大会が終わりました。
 多くのナショナルメンバーが出場したこともあり、大会は大いに盛り上がりました。
 それぞれの試合のレベルも高かったと思います。
 ただ、ひとつ言えば、キラリと光る若手の活躍が少なかったように思います。
 そんな中で、右ヒザ前十字靭帯断裂の大ケガから復帰した遠藤大由選手(東京)は、
 まだ完全復帰とは言えないものの、その非凡さを十分に見せてくれました。
『総合までには間に合わせます』
 という言葉に期待したいと思います。

 ランキングサーキットでの活躍を評価され、ナショナルチームに昇格した栗原文音選手
(東京)は、準々決勝までは堂々たる戦いぶりで、成長の跡を感じさせてくれましたが、
 同チームの先輩、平山優選手にはね返されました。
 『全日本総合では、必ずもっと上位を狙います』
 と、栗原選手、決意を語ってくれました。


 15日からは中国マスターズが開幕。
 そして22日からは、いよいよヨネックス・オープン・ジャパンが開幕します。
 出場選手らは15日より合宿に入り、大会に備えます。
 コンディショニングを整え、最高のプレイができる準備をして欲しいものです。

 更新が少々遅くなってしまい、申し訳ありませんでした。

 ということで、また、近々お会いします。



            (取材・文/ライター 佐藤純郎)