第62回 全日本実業団選手権大会

第62回全日本実業団選手権大会観戦記


『4日目準々決勝・準決勝(7/16) 観戦記』


 “ジュンジュン”が一番おもしろい―― とは、かつて甲子園の高校野球でよくいわれていた言葉だ。勝ち抜いてきたベスト8の準々決勝での激突が、1日で見られるのだから(もっとも現在は、2試合ずつが2日間で行われるようになったが)。
 この全日本実業団でも、“ジュンジュン”からが正念場だ。なかでも白熱したのが、昨年準々決勝の再現となったルネサスとNTT東日本の一戦。昨年同様、第3シングルスまでもつれにもつれ、最後はルネサスの高卒ルーキー・福島由紀が、ナショナルメンバーの後藤愛をファイナル18本で突き放し、ルネサスが4時間45分の激闘をモノにした。
 今井彰宏監督がいう。
 「ナショナル2人(三谷美菜津、後藤)を破ったのは立派。ことに初めての団体戦で単複を兼ねてどちらも取った福島は、なかなかいいタマを持っています。高卒すぐで、緊張もしたでしょうが・・・」
 ただ、激闘のおよそ40分後に開始された準決勝・日本ユニシス戦はさすがに苦しかった。
 ナショナルメンバーの高橋礼華/松友美佐紀、さらにシングルス陣にも打田しづか、野尻野匡世らタレントのそろうユニシスに対し、ルネサスは2枚看板の末綱聡子/前田美順、藤井瑞希/垣岩令佳を海外遠征で欠く。だからこそ準々決勝での勝利が光るのだが、次の相手は日本リーグ連覇のユニシス。昨年の成長株・久保あすみ/横山めぐみは高橋組に13本、14本と一蹴され、伊東可奈/宮内唯も栗原文音/篠谷菜留に敗退。第1単の福島も王英に食い下がるが、19本16本が精一杯だった。
「高校でも1日何試合もやることがありましたが、疲れ方がまるで違う。1試合で高校の3試合分くらいやった感じです。」(福島)
 一方、実業団初優勝を狙う日本ユニシスの清水文武コーチはいう。
 「第2複に不安のあるオーダーでしたが、よくポイントを稼いでくれた。準々決勝まででシングルス陣を休ませられたのが大きいですね」
 もうひとつの女子準決勝では、パナソニックが岐阜トリッキーパンダースに圧勝。海外から前日帰国したばかりの松尾静香/内藤真実を温存してのもので、日本ユニシスとの決勝は好勝負になりそうだ。ちなみに昨年、両者は準決勝で当たり、パナソニックが3-2の激戦を制しているが、果たして−―。
 男子で“あわや”と思わせたのが、日立情報通信エンジニアリングだ。トナミ運輸との準決勝。第1複の海野祐樹/山崎裕太が、世界ランキングでも上位の平田典靖/橋本博且と互角のラリーを演じる。
 平田組が前日に海外から帰国したばかりで、動きと反応にやや精彩を欠いたものの、山崎の攻撃力、海野の前衛力が冴える。ファイナルも22オールから平田のサーブミス、さらにたたみかけるプッシュで2点連取。金星につなげた。
 そして大嶋一彰/三橋智希の第2複も、園田啓悟/嘉村健士との第2ゲームを奪取してファイナルに。日立の杉山勝美監督はいう。
「1ダブを取った勢いが持続していた。おもしろい展開にはもちこめました」
 ただファイナルは、園田組もちまえのマシンガンラリーに耐えきれない。10-17から15-20まで詰め寄ったものの、最後は園田に角度のあるスマッシュをたたき込まれた。杉山監督が残念がる。「最後は技術よりメンタルでした。勝負どころでの積極性で相手が上だった。」
 こうなると、シングルスはトナミに分がある。
 やはり前日に帰国したばかりの佐々木翔が早崎修平を、古財和輝が甲谷光を圧倒。トナミ運輸が6年連続の決勝進出を果たした。
 「(平田組は)やはり体調がきついでしょうね。ふだんの表情じゃなかった。ただ、今日の黒星で“やるぞ”という気になってくれれば・・・。また、実業団には初出場の嘉村が力を発揮してくれたのが大きい。ダブルスで1-1になれば、佐々木、古財のシングルスでなんとか、と思っていましたから」(荒木純監督)
 日本ユニシスとの決勝は、昨年の再現になる。ナショナル組の早川賢一/遠藤大由を海外に出さず、ここに照準を合わせてきたユニシスが6年ぶりのVを果たすか、それともトナミの4連覇なるか。

               美郷茂樹

『5日目決勝(7/17) 観戦記』


 決めたのは、上田拓馬だった。これを取れば、日本ユニシスにとって6年ぶりの優勝という、トナミ運輸・武下利一との第2シングルス。2ゲームは先にマッチポイントを握りながら、勝ち急いで逆転を許し、もつれたファイナルゲーム。上田の20-13から、コート奥を狙った武下のクリアーがサイドラインを割り、男子としては異例の4時間半に及ぶ激闘に終止符を打った。
 上田は一昨年の、武下は昨年のインカレ王者。学生時代から何度も対戦し、現在はナショナルでもしのぎを削っており「手の内はお互い、知り尽くしています」(上田)。 だからタフなラリーになり、先に集中の質が落ちたほうが後手を踏む。一枚上は、上田。そういえば5月のトマス杯でも、日本に3位をもたらしたのが上田だった。インドネシアとの準々決勝は、2-2という胃の痛くなるような最終シングルスで相手を下しているのだ。そういうキャリアが、大一番ではモノをいう。
 それにしても、どちらが勝つかわからない展開だった。第1複では、ナショナルメンバーでインドネシアOPから帰国したばかりのトナミ・平田典靖/橋本博且が、廣部好輝/圷畑亮太をなんとかファイナルで振り切る。第2複は、海外遠征を自重してこの大会に備えたユニシス・早川賢一/遠藤大由が、園田啓悟/嘉村健士とのマシンガンラリーをやはりファイナルで制す。
 そしてMVPは――移籍2年目のユニシス・坂井一将だ。今大会にただ一人出場したオリンピック代表・佐々木翔をファイナルで下す金星。「1ゲーム目からスピードを上げてラリーの先手を取り、ロブにしてもしっかり体を入れられないように追い込むことを意識した」(坂井)のが功を奏した。佐々木もやはり、金曜にインドネシアOPから帰国したばかりで体調が万全ではなかったものの、坂井にとっては「金沢学院クラブ時代から、一度も勝ったことがない」相手。前日にはNTT東日本・佐伯浩一からも初勝利をあげており、最優秀選手にふさわしい活躍だった。
 チームを率いる坂本修一監督によると、「この優勝は、シングルス陣の底上げに尽きます。つねに“ユニシスはシングルスが課題”といわれてきて、確かに2複3単の実業団ではなかなか勝てなかった。去年も決勝でトナミさんにやられましたし。だから今年は中西(洋介)コーチを中心に、シングルス勢は相当キツイ練習をやってきました。大阪国際では坂井と山田が決勝に進出したように、その成果が出ています。6年前は選手としての優勝でしたが、スタッフでの優勝はまた格別ですね」。
 女子も決勝に進出した日本ユニシス。男女のアベック優勝となると、1992年の電電東京以来大会史上3度目だったが、それを阻んだのが女王・パナソニックだ。これもインドネシアOPから帰国した松尾静香/内藤真実が、栗原文音/篠谷菜留を一蹴。逆に第2複は、高橋礼華/松友美佐紀がモノにしてユニシスが1-1のタイに持ち込む。結果的に、エースペアの激突を回避したユニシスにとっては、シングルス勝負は想定していたところだろう。
 第1単は、パナソニックの次代のエース・高橋沙也加と、ユニシスは「動きはイマイチだけど、リバースカット、カット……すべてのショットがえぐい」(パナソニック・谷内貴昭監督)王栄の対戦。栗原が故障、野尻野匡世も本調子ではなく、第3単に松友を起用せざるを得なかったユニシスとしては、ここを取って優位に運びたいところだ。
 ただ――フタを開けてみれば、高橋のスピードが王にバドミントンをさせなかった。
「相手のタマは全部強いけれど、動けない。拾って、つないで、ネットを上げさせればこちらにチャンスが来る」(高橋)という思惑通り、ネットやロブで王を動かし、動かし、動かす。そして好機には、長くしなやかな手足を利して鮮やかなスマッシュ。
1ゲームは6連続得点などで抜け出して16本、2ゲームは終始リードを保って10本という快勝だった。
 第2単は、パナソニック・今別府香里、ユニシス・打田しづか。昨年の準決勝の再現は、終始優位にゲームを運んだ打田が終盤の3連続ミスで自滅して1ゲームを落とすと、2ゲームは取り返したもののファイナルのすえに今別府。打田は最後までミスの連鎖が止まず、光ったのは、相手を前におびき出して強打という今別府の構成力だ。
 それにしても、パナソニックのチーム力はどうだろう。MVPの高橋は、ルーキーだった昨年のこの大会、米元小春とのダブルスで1試合に出場したのみ。それが昨年の社会人優勝、今年の大阪国際優勝と、目覚ましい伸びを見せている。この大会でも、シングルス3試合に出場して失ゲームゼロの3勝と、優勝に大きく貢献した。パナソニックはつごう4試合で失マッチ2、三木祐里子/米元ら、出場した全員がポイントを獲得している。エース・廣瀬栄理子まで一度も出番が回らなかった優勝に、「中堅、ベテラン、全員で勝ち取った優勝です」と谷内監督はいう。パナソニックは、チーム名が変わった昨年からの連覇で、優勝回数は、17を数えた。
               美郷茂樹