観戦記 12月27日
令和3年度 第75回 全日本総合バドミントン選手権大会
12月27日(月)
男子ダブルス
全日本学生優勝、ランキングサーキット3位入賞と、小学生のころから組んでいるダブルスが国内屈指のレベルに洗練されてきている武井優太/遠藤彩斗と、新しいペアリングで参戦した仁平澄也/山田尚輝が顔を合わせた。
第1ゲームは、遠藤が「自分たちのスタイルであるノーロブ(低い展開)でいけるように声を出して気持ちを高め合った」と振り返ったように、低い球にも潜りこんで気迫のこもった強打を放ち2度の連続ポイントで7-2とスタートダッシュを切る。一方の仁平/山田はレシーブを左右に振ってから、甘くなったリターンを仁平が角度あるスマッシュを打ち込んで対抗する。お互いに点を取り合うも、素早いローテーションからの連打で押し切った武井/遠藤が21-16で奪う。
第2ゲームも遠藤/武井は攻撃の手を緩めないが、仁平/山田の巧みなドライブ配球や、前衛と後衛の間へのスペースを狙ったリターンに苦戦し、第1ゲームのように流れに乗ることができない。如何に攻めの形を作るか、前衛での駆け引き、二人の間を狙うドライブにより白熱の攻防が繰り広げられ15-15となる。遠藤/武井が相手のミスショット、山田のプッシュへのリターンエースで2連続ポイントを奪って一歩抜け出す。最後は武井のサービスプッシュに仁平が反応できず、21-19で遠藤/武井が準々決勝進出を果たした。
試合後、武井/遠藤は、「明日の準々決勝は、肩の力をもっともっと抜いて、自分たちのプレーをしたい(遠藤)」「誰が勝ち上がってきても強いと思うので、緊張しないで自分たちから向かっていく気持ちで頑張りたい(武井)」と更なる高みへ向けて意気込みを語った。




- 本田 尚人(大同特殊鋼)
- 大関 修平(大同特殊鋼)
- 21-18
- 21-17
- 森口 航士朗(埼玉栄高校3年)
- 野口 翔平(埼玉栄高校3年)
ランキングサーキット5位入賞の本田尚人/大関修平が、この種目高校生で唯一勝ち残っている森口航士朗/野口翔平を迎えた。昨日は、経験豊富な社会人ペアの森田浩平/間瀬亮介(東海興業)との接戦をものにして、勢いに乗る高校生の代表として、森口/野口がどこまでできるか注目が集まった。
1ゲーム目、お互いに得点を取り合うも、本田/大関のミスが重なり8-11と森口/野口が抜け出す。このまま一気に行くかと思われたが、野口が「昨日に比べて、ラリーに持っていく前にミスをして、普段ミスをしないような球もミスをして自分たちの流れに持っていくことができなかった。」と振り返ったように、要所でミスが出てしまう。本田/大関は連続ポイントで14-13と逆転すれば、17-14、19-15とリードを広げる。最後は大関のドライブが決まり、21-18とする。
2ゲーム序盤は接戦になるものの、森田/野口のネット前のミスなどで7連続ポイントを奪った本田/大関が15-9と抜け出すと、「高校生相手に自分たちのプレーを出せた」という本田/大関が21-17で嬉しいベスト8入りを果たした。森口は「自分たちの持ち味を出せなくて不完全燃焼で終わってしまった」と悔しさをにじませた。
試合後、本田/大関は「相手が格上だからしっかりと向かっていく気持ちで頑張りたい(大関)」「自分たちらしいプレーが出せるように頑張りたい(本田)」と語った。一方の森口/野口は別々の進路となるためペアは解散となる。「この会場の雰囲気をもう一回味わいたいと思ったので、大学でも結果を残して総合でベスト8に入れるように頑張りたい(野口)」「実業団でシングルスがメインとなるが、昨日負けてしまったので、もっと上に行けるように頑張りたい(森口)」と悔しさを胸に決意を新たにした。




男子シングルス
- 高橋 洸士(トナミ運輸)
- 13-21
- 21-16
- 21-19
- 武井 凜生(ふたば未来学園高校3年)
1回戦では格上の坂井一将(金沢学院クラブ)をストレートで下した高橋洸士と予選勝ち上がりの武井凜生が対戦した。髙橋が社会人2年目、「年下には負けられないプレッシャーがすごくあった」と強い気持ちで臨んだ。
第1ゲーム、武井が積極的に四隅への素早い球回しで攻撃の形を作っていく。特にラウンドからライン際に叩き込むスマッシュが決定打として機能し、13-4を大きくリードを奪う。一方の高橋は我慢のラリーで反撃の糸口を探るが、前半の得点差は大きく、21-13で武井が簡単に奪う。
第2ゲームも勢いそのまま5-1武井リードとなり、このまま行くかに思われたが、スピードに対応し始めた高橋が盛り返していく。高橋が大人のプレーで長いラリーに持ち込むと、武井にミスが出始める。これまでずっと追いかける展開だった高橋が9-8で初めてリードを奪うと、そのまま先行して中間インターバルを迎える。流れを取り戻したい武井は、これまで使っていなかったボディへのスマッシュで打開を試みるが、一度傾いた流れはそう簡単には戻らない。我慢のラリーを続けた高橋が21-16と奪い返した。
ファイナルゲームは、髙橋が丁寧なラリーから攻撃の形を作っては決め切り、7-1とスタートダッシュを決めるが、負けじと武井も追い上げを見せて混戦となる。しかし、武井は「ラリー勝負を嫌がって、切りたいと思ってしまった」と振り返るように、要所でスマッシュがサイドアウトするなどして詰め切れない。19-19の場面、高橋がヘアピンでエースを決めると、最後は武井のロブがバックアウトとなり、21-19で高橋が77分の接戦をものにした。
試合後、髙橋は「明日はベスト4のかかる大事な次第。しっかり休んで、自分のプレーができるように準備をしていきたい。」と話した。悔しい敗退となった武井は「攻めも守りもまだまだ。まずは、国内大会を優勝してB代表、A代表に選ばれるような選手になって、そしてその先にオリンピックの金メダルを目指したい。」と上を向いた。




女子ダブルス
A代表の福島由紀はパートナーである廣田彩花がリハビリ中のため、今大会は後輩の杉村南美とペアを組んで出場している。2回戦へと駒を進めたこの2人は、予選からの出場で大学生相手に勝ち進んできた中出/押見ペアと対戦した。
第1ゲーム、福島/杉村の3連続得点で始まると試合の主導権を福島/杉村が握る。序盤、お互いを探り合うようにゆっくりなペースで進む試合展開を見せるも、福島/杉村は高校生ペアを左右に振ったレシーブから攻撃の体制へと展開し、杉村が後衛からスマッシュを沈めて得点を重ねていく。徐々に自分たちの攻撃が封じ込められ、後半コンビネーションに乱れが出始めてしまった高校生ペアの中出/押見は、相手に8連続得点を許してしまう。終始主導権を握った福島/杉村が21-11で先取した。
第2ゲーム、中出のスマッシュ強打で高校生ペアが先取する。攻める姿勢を取り戻した高校生ペアは果敢に攻撃をして勢い付いていく。プッシュのエラーなど粗削りな面も垣間見えるが、徐々にリラックスして思い切ったプレーが現れると、9-9と善戦する。しかし、リードを奪っていくのはやはり福島/杉村。コンビネーションのパターンを変えて相手を翻弄する。これまでは福島が前衛で杉村が後衛の体制が多く見られたが、ここからは杉村がレシーブから素早く前衛に入り、福島が後衛で攻撃をする展開で、より強力な攻撃を仕掛ける。対応に苦戦した中出/押見はインターバルを挟んで7連続得点をゆるし、9-17と大きく引き離されてしまう。押見のサービスプッシュで連続失点を断ち切り、積極的に自分たちから仕掛けて食らいつくが、最後は杉村がプッシュを決めて福島/杉村が21-15と勝利を手中に収め、準々決勝進出を決めた
試合後、福島は記者に杉村の良いところを聞かれると、「すごい明るくて、楽観的でポジティブ。その分、積極的なプレーも多いので、そういう部分をどんどん出してプレーしてくれれば、あとは自分もカバーしますし、逆に自分が思い切ったプレーをした時はカバーしてくれれば嬉しいなと思います。それを積み重ねて、勝ちに繋げていければいいなと思うので、明日も一戦頑張りたいと思います。」と語った。試合を通して新たな武器を創出していくこのペアが、次戦でどのような変化を見せてくれるか目が離せない。




女子シングルス
総合優勝の経験がある佐藤冴香と、B代表の川上紗恵奈による実力者同士の戦いが行われた。佐藤は今大会で個人戦の引退を表明しており、集大成として5年ぶりの優勝を狙う。
第1ゲーム、川上は風の影響でコントロールに苦しみ、立て続けにショットをコート外に出してしまう。一方、佐藤は持ち前の手足の長さを生かした早いタッチでゲームを展開し、川上にリードを許すことはなくに自分のペースで攻め立てていく。最後は川上のクリアがバックアウトとなり、佐藤が21-17としてゲームを奪う。このゲーム、川上は「風の影響があったので、ついていって離されなければ最後チャンスがあると思っていた。しかし、最後のところで自分のミスが続いてしまい落としてしまった。」と振り返った。
第2ゲーム、川上が最初のポイントを取ってこのゲーム始まる。川上はミスを減らし、長いラリーに持ち込んで得点を奪うなど、持ち味を発揮する。一方、佐藤は精彩を欠き、ゲームメイクに苦しんで川上に点差を広げられてしまう展開となった。高い打点から繰り広げられる鋭いショットで川上の連続得点を絶つ場面こそ見られるが、長いラリー戦に持ち込まれると川上の粘りのプレーに対応しきれず、中々差を縮めることができない。最後は川上のクロスネットを佐藤が返せず、21-11とした川上がゲームを取り返す。
ファイナルゲーム序盤、互いが譲らないシーソーゲームが繰り広げられる。シャトルが飛ぶコートから始まった川上はアウトをしない攻めの作りで試合を組み立てることを試みる。一方、ラリー戦から自分のペースに持ち込めるタイミングまで我慢し、チャンスがくれば自身の得意な試合展開へと持ち込んだ佐藤。シーソーゲームから先に抜け出したのは佐藤だった。そこから佐藤は流れを一気に自分の方に引き寄せ、11-7と佐藤の4点リードでチェンジエンズを迎える。後半最初のポイントも奪った佐藤は、そこから勢いを加速させた。そんな勢いにのまれないよう、慎重なラリープレーで食らいつく川上だったが及ばず。チャンスがあればすぐさま低く速い試合展開に持ち込む佐藤が、相手の体勢を崩してはネット前をプッシュで確実に決めていった。リードを保った佐藤がファイナルゲーム21-13として勝利をもぎ取り、準々決勝進出を決めた。
試合後のインタビューで佐藤は「最後の一試合だと思いながら毎日寝ている。ちょっと体が硬くなりがちなので、もう少しリラックスして入りたい。」と笑って答えた。長い間、女子シングルスを牽引してきた選手が今大会残りの試合をどのように戦うのか、その姿をしっかりと目に焼き付けたい。




今大会ダブルスとシングルスともに本戦出場した実業団ルーキーの香山未帆と、A代表入りを果たしたこの一年間で多くの経験を積んできた髙橋明日香が顔を合わせた。
第1ゲームは序盤から、香山が髙橋はリーチの長さと高い打点から放たれる角度あるショットに苦戦する。一方の髙橋は試合後「昨日の試合で出だしが自分の動きができてなくて相手主導だったので、今日はそこを直して、向かっていこうという気持ちでやった」と振り返ったように、落ち着いた様子で試合を展開していき、連続得点で香山を引き離して、11-3でインターバルを迎える。後半、香山が少しずつペースを掴んでくる。髙橋の繰り出す鋭いショットに対して早いタッチで切り返し、甘くなったシャトルをライン上に沈め、得点を取り返していく。しかし、序盤での差は大きく髙橋が21-14で逃げ切った。
第2ゲーム、香山は持ち前のフィジカルを活かし、大きい展開でラリー戦へと持ち込んでチャンスを伺う。第1ゲームよりも長くなったラリーで髙橋のミスを誘い出し、11-10と奮闘する。しかし、すぐさま気持ちを入れ直した髙橋はミスをしたショットを直ちに修正し、再び香山を追い込んでいく。精度を取り戻した髙橋のショットはことごとくライン上に決まり、香山の足を止めた。終始リードを保った髙橋は2ゲーム目を21-15で終え、順調な勝ち上がりを見せた。
試合後、香山は「今年は色々な試合がなくなり、総合に向けての準備期間が長かったので、かけた気持ちが大きく、それが大きすぎて、自分らしいプレーができなかった。そういったところに自分の経験の少なさを感じる。今後はS/Jリーグがあるので、それに向けてしっかり切り換え、成長した姿を皆さんに見せられるようにしたい。」と語った。今後の活躍に期待したい。
明日の準々決勝で再春館製薬所の郡司莉子と戦う髙橋だが、「勢いのある若手の選手。簡単には勝てないので、今日のダメだったことを修正して明日に繋げて、いい試合をしたい」と意気込みを見せた。




ミックスダブルス
ナショナルB代表の山田尚輝/池内萌絵と高階知也/本田恵利奈が顔を合わせた。この対戦は今年のランキングサーキットの1回戦で組まれていたが、高階/本田の棄権により試合が実現しなかった。半年を経て全日本総合の舞台での実現となった。そしてベテラン高階が放つスマッシュの豪快な音が体育館に響き渡ると、今年も総合に来たなという気持ちになる。
第1ゲーム、前衛での刺し合いで池内がひるまずに前に出てチャンスメイクをすると、山田が後衛から強打を決めて行く。連続3ポイントで5-3と抜け出し、9-5、11-7と確実に主導権を握る。高階/本田も左右への揺さぶりで相手コンビネーションの合間を狙って対抗する。それでも攻めの手を緩めない山田/池内がさらにリードを広げていき、21-16で奪う。第2ゲームに入っても山田/池内が要所を締めたプレーで進めていく。終わってみれば21-15。一度もリードを与えず完勝した。
山田/池内は、明日の準々決勝で同じくナショナルB代表の緑川大輝(早稲田大学)/齋藤夏(ACT SAIKYO)と対戦する。第1シードにして、もう1組のナショナルB代表である西川裕次郎/尾﨑沙織(NTT東日本)が棄権により姿を消したため、明日の準々決勝が事実上の決勝戦という見方もある。熱く、ハイレベルなゲームを期待したい。



