観戦記 12月27日
令和2年度 第74回 全日本総合バドミントン選手権大会
日程 | 種目 | 1コート | 2コート | 3コート | 4コート |
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12月22日(火) | 男子ダブルス・女子ダブルス1回戦 | 第1日目 1コート | 第1日目 2コート | 第1日目 3コート | 第1日目 4コート |
12月23日(水) | 男子・女子シングルス 混合ダブルス1回戦 | 第2日目 1コート | 第2日目 2コート | 第2日目 3コート | 第2日目 4コート |
12月24日(木) | 全種目2回戦 | 第3日目 1コート※ | 第3日目 2コート | 第3日目 3コート | 第3日目 4コート |
12月25日(金) | 全種目準々決勝 | 第4日目 1コート※ | 第4日目 2コート | 第4日目 3コート | - |
12月26日(土) | 全種目準決勝 | 第5日目 1コート※ | 第5日目 2コート | - | - |
12月27日(日) | 全種目決勝 | NHKBSで放送 | - | - | - |
12月27日(日)
男子シングルス
80分に渡る死闘、世界ランキング1位の意地を見せた3連覇
決勝カードは、2018年10月から世界ランク1位キープし続け、本大会3連覇を目指す絶対王者、桃田賢斗に、
本大会初の決勝進出を果たした常山幹太が挑戦する形となった。
第1ゲームの立ち上がりから常山が積極的に低いショットで仕掛け、スピーディーなラリー展開となる。
慌てず冷静に対応する桃田は常山を四隅に動かし隙があれば強打で得点を重ね11-5とする。
しかし、桃田の猛攻に喰らいつく常山がネット前から溜めのある攻撃的なロブショットで桃田を揺さぶり、詰め寄る。16-18の桃田リードの終盤、
「ちょっと焦ってしまった」と桃田のライン際に放たれたスマッシュがわずかにアウト。
この大事な1本を取れたことで常山が流れを引き寄せ、連続ポイントで21-18と先取する。
第2ゲーム、常山は得意とするスピーディーなラリー展開に持ち込もうと積極的に強打を叩き込んでいけば、
桃田はディフェンスから崩していく大きな展開で対抗し、対照的な戦略で主導権をめぐって緊張感ある駆け引きがされる。
大きい展開でコート一杯に動かされて体力を削られた常山にミスが重なり、6連続ポイントで21-12 で桃田が奪い返す。
勝負のファイナルゲーム、常山がスピードを上げて4連続ポイントで桃田を突き放す。一方の桃田も負けじと粘り強いプレーで応戦し追い上げる。
これまでの疲労を感じさせない激しいプレーで、点を取られては取り返し、終盤へ。
「常山選手が疲れているのも見えましたし、自分はまだまだ動けるというのが気持ち的にも体的にもあったので、出し切ろうと」
と試合後に語った桃田が16-16からスピードで常山を突き放し、21-17で3連覇を達成した。
試合後の会見で心境を聞かれた桃田は「ほっとしたのが7割、うれしいのが3割」
「(世界ランク1位の)プレッシャーで耐えられなくなることもありますが、明日から練習頑張っていきます。」と笑顔で答えた。
一方、惜敗となった常山は「いいところまでできたのですけど、悔しい気持ちが大きいです。
最後ギア上がらなかった。桃田選手はそれでも上げてきた。そこが足りなかった。」と振り返った。
女子シングルス
熾烈な女王対決、77分に及ぶハイレベルな試合を制した奥原が4度目Vを達成
共に過去3度の総合優勝を果たし、4度目の女王を目指す日本女子シングルスの2トップが昨年に続き決勝の舞台で顔を合わせた。
第1ゲーム、お互い様子を見るようにゆったりしたラリーで幕を開けたが、山口が先手を打つ。
ひと際低い弾道のドリブンクリアで執拗に相手をリアコートに押し込んでは、
逆サイドへのスライスショットやショートリターンを挟んでチャンスを作り決めて山口が先行する。
中盤、奥原の得意のラリーでの猛追に対して、山口は勝負所での長いラリーを確実に制して流れを渡さない。
「攻めるところとラリーするところのけじめをつけながら、メリハリを上手くつけてプレーできた」という山口は、
最後はラウンドからのクロススマッシュでエースを決めて21-17、このゲームを奪った。
2ゲーム目に入って山口のスピードに適応してきた奥原が本来の粘り強いプレーを発揮する。
厳しいラリーを飛びつきスマッシュで制して11-9とリードして折り返すと、
「コロナ禍でしっかりトレーニングして強化してきたベースのフットワークが生きた」と言う通り、
足運びで勝った奥原が主導権を握って離さない。順調に得点を重ね、最後はネット前に詰めてプッシュを沈めて21-14とゲームを奪い返した。
ファイナルゲームは山口が1本目のスマッシュをサイドライン上に突き刺すなど、より攻撃の意識が前面に出た立ち上がりとなる。
スピードを上げた山口はサイド攻めと積極的なジャンピングスマッシュで序盤に飛び出し、8-2とリードを奪う。
「1本1本を大切に戦っていくことを今大会の課題としていた」という奥原は、
ここでラリーから得意のドロップショットを決めて反撃ののろしをあげると、正確なショットの連続で追い上げていく。
13-13で並んだ両者は、その後意地のぶつかり合いかのごとく、点を取り合っていく。
山口は19-20の局面から28打の長いラリーをスマッシュで制し、延長ゲームに持ち込む。しかし山口の反撃はここまで。
奥原はスピードに乗ってプッシュを決め再度チャンピオンシップポイントを握ると、
最後は積極的に飛びついて気迫の籠ったスマッシュがネットインとなり22-20。奥原は4度目の優勝を自身初の連覇で飾った。
試合後には「山口選手との戦いは、とてもハイレベルでバドミントンの奥深い駆け引きがあるので、その楽しさを味わうことが出来るし、
お見せすることができる。久しぶりの大会の決勝戦で山口選手と試合ができたことは本当に良かった。」と語った奥原。
ライバル対決で得た大きな収穫、喜びを糧に更なる進化を追い求めていく。
男子ダブルス
試合中の対応力で自分たちのプレーを貫いた遠藤/渡辺がうれしい3連覇!
本大会2連覇、3度目の優勝を目指すディフェンディングチャンピオン、遠藤大由/渡辺勇大ペアが決勝で迎え撃ったのは、
昨日先輩ペアを破り3年ぶりに決勝にコマを進めた保木卓朗/小林優吾。本大会これまで好調の保木/小林は初優勝を虎視眈々と狙う
第1ゲーム、お互いに戦略を練って臨む。これまで大きな展開でいいリズムだった遠藤/渡辺は、
「攻撃力のある保木/小林に大きな展開作戦をコーチとプランを立てた」というのに対して、
予想が的中した保木/小林が積極的に攻めて有利に進めていく。
11-5と6点リードでこのまま保木/小林が行くかに思われたが、「作戦に縛られて動きが悪くなってしまった。試合の中で修正した。」
と遠藤/渡辺は大きい展開から速く低い球で揺さぶりをかけ、「(作戦変更に)あたふたしてしまった」という保木/小林。
12-18から遠藤/渡辺ペアは、遠藤の安定した攻撃と渡辺のトリッキーなショットで8連続ポイント奪い、
最後は遠藤がスマッシュで決めて、21-19で奪取する。
第2ゲームは1ゲーム目の勢いそのままに遠藤/渡辺ペアが連続得点を重ねる。「今大会いい試合ができていたが、決勝では相手の引き出しが多かった。
(自分たちは)気持ちの切り替えや作戦の面で、引き出しが少なかった。」と保木が試合後振り返ったように、
保木/小林の得意とする勢いのある連続アタックが息をひそめてしまう。終始、ゲームをコントロールした遠藤/渡辺が21-9で3連覇を成し遂げた。
試合後の会見で今後の目標を聞かれた遠藤/渡辺ペアは「今大会で新しい課題やいいところを二人で再確認してもう一段階強くなりたい。」(遠藤)、
「オリンピックで金を取りたい。」(渡辺)と意気込みを語った。
一方、敗れた保木は「今回優勝を強く思って望んでいたので、決勝でちょっと残念な結果になってしまったので悔しい気持ちしかない」と話せば、
小林は「決勝は自分たちの我慢のなさや自分たちの悪いところが出てしまったのは、本当に悔しい。
一戦一戦今日のプレーを反省し、自分たちのプレーをしていきたいと思う。」と前を向いた。
女子ダブルス
白熱の攻防とロングラリー、バリエーション豊かに攻守に勝った福島/廣田が女王に返り咲く
昨年と同じ組み合わせとなった女子ダブルス決勝戦。共に世界でも屈指の攻撃力を誇る大型ペアだけに、激しい攻防の行方に注目が集まった。
第1ゲーム、福島/廣田は優れたコンビネーションからアタックを繰り出し開始早々4連続得点をあげる。
永原/松本も松本のスマッシュを決定打にして応戦し、序盤から激しい打ち合いとなる。
7-9の場面から110打を超えた約2分にわたるロングラリーを永原がプッシュを決めるなどし、10-10と競った展開となる。
しかし「相手のレシーブが堅いのに攻めすぎてしまい、プレーに迷いも出てしまった」と永原/松本が振り返るとおり、
後半にはミスも散見した他相手に決められる場面も増えた。福島が永原のボディ高めに放ったスマッシュが決まり、21-17で福島/廣田がゲームを奪う。
続く第2ゲームも互いの強打が行き来する激しい展開で進んでいくが、持ち前の鉄壁ディフェンスにさらに磨きをかけてきた福島/廣田は、
相手のアタックを自在なコントロールでリターンし、リードを保って得点を重ねていく。
前半こそ11-9と、僅差の折り返しとなったが、後半はまさに福島/廣田が支配したゲームとなった。
ミスの少ない攻守の切り替えで次々にシャトルを沈め、リードを広げていく。
再びの110打を超える長いラリーも廣田が決めて奪うなど全く危なげのない展開で、
最後まで良いパフォーマンスを保って攻めたてた福島/廣田が21-12として2年ぶり3度目の優勝を掴んだ。
「素直に優勝することができて嬉しい気持ちで、優勝した瞬間はサポート応援してくださった色んな方々の顔が浮かんだ。
優勝というかたちでお届けできてよかった。(福島)」「試合ができることのありがたさを感じた。無観客であったが、
応援してくださってる方のことを考えて、2人で戦った結果なので嬉しいです。(廣田)」と喜びを語った2人は、
先の見えない情勢下でも「優勝できたことは来年にも繋がるので、
自分たちらしく一戦一戦大事に来年も戦っていきたいと思う。」と前を向いて口を揃えた。
ミックスダブルス
ペアとしての完成度、経験値で圧倒。苦しい中で掴んだ4連覇でさらなる飛躍を誓う
3連覇中でこの種目を牽引する世界ランキング5位の渡辺勇大/東野有紗と、
同じ所属で今大会から混合ダブルスへの専念を決めた松友美佐紀と金子祐樹のペアが対戦した。
世界トップで戦う渡辺/東野はもちろんのこと、
男子ダブルスと女子ダブルスそれぞれの種目で経験豊富で実績のある金子/松友による世界レベルのラリーが繰り広げられた。
1ゲーム目、7-6から渡辺がスマッシュで決めるなどして10-6、14-7と連続ポイントで抜け出して勢いに乗る。
「シャトルが飛ばず自分の攻めが淡泊になってしまった。」という金子に対して、
渡辺/東野はレシーブで左右に動かして渡辺のスマッシュ、東野の前衛の王道パターンで決めて21-11とする。
点差はあるものの、ラリーの主導権争いの緊張感ある駆け引きには画面越しに皆が息をのんだことであろう。
第2ゲーム、攻めの形を作りたい両ペアによる、前衛での差し合い、後衛から左右へのドライブの打ち分けとせめぎ合いが展開される。
4-5とお互いに点を取り合うも、ペアとしての完成度や混合ダブルスという種目の経験値が大きく影響しているのを感じた。
攻守が目まぐるしく交代する中で、渡辺が前に入れば素早い反応で東野が後衛からジャンピングスマッシュでアタックの手を緩めない。
チャンスどころでは、渡辺の動きのテンポがさらに一段階を上がり相手に襲い掛かる。結局は21-9で渡辺/東野が圧倒して、4連覇を達成した。
試合後渡辺が、「まだオリンピックが開催されると確実には決まってないが、
そこで金メダル撮るのが目標だし、先を見すぎずに1試合1試合ベストな状況で臨みたい。
(1月から国際大会に参加するため、)海外の試合がなくなって、自分たち自身なにが足りていて足りていないのか、修正していきたい。」と話せば、
「モチベーション保つのが厳しい時期もあったが、この大会でいい状態になれたので、この波に乗れるようにしたい。
1月からはタイの大会が開催されるので1試合1試合二人で楽しんでオリンピックに向けて頑張りたい。」と東野が話した。
今回混合ダブルスに専念した松友は、「女子ダブルスで私の中で、高橋(礼華)先輩とやってきて、
それ以上の景色、感覚というのはきっと難しいと思いましたし、
プレーという訳ではなく、説明は難しいのですが、1人のバドミントン選手として成長していくときに、
違う方に改めて挑戦して1人の選手として成長したいという思いがあった。」と心境を語った。